こんにちは。
観劇三昧OLです。
緊急事態宣言が4月25日から発令されました。
アリージャンス大阪公演、突然の中止で混乱を招く恐れもあり、上演続行決定。
ほっとしました。
今回もいつもと同じくひとり観劇なので誰とも話しません。
感染対策をきちんと行い、4月24日12時公演を観てきました。
非常にメッセージ性の強い作品で、終演後しばらくはぼんやりしてしまうほど、客席に重たいものを投げかけるミュージカルでした。
そのせいもあってか、未だに何を書けばいいか分からない状態でいます。(現在5月3日午後10時)
とりあえず、今思っていること、心に残っていることを書いていこうと思います。
あ、海宝さんが歌上手いのは当たり前すぎたので今回端折っています。
(いやほんと上手かった。技術的に素晴らしいのはもちろん、音に言葉に感情とか生き様とか諸々乗っかってくるからほんと凄いとしか言いようがない。)
今回の記事はキャストさんがどうこうというよりは、この作品って何じゃろな??っていうのをだらだらと考えていく文章なのでご了承ください。Higherについては軽く触れています。
それでは、
レッツゴー!
概要
キャスト
ケイ・キムラ 濱田めぐみ
サミー・キムラ 海宝直人
フランキー・スズキ 中河内雅貴
ハナ・キャンベル 小南満佑子
サム・キムラ 上條恒彦
マイク・マサオカ 今井朋彦
タツオ・キムラ 渡辺 徹→松原剛志
ディロン局長 照井裕隆
ヒデオ・タナカ/ベン・マサオカ 西野 誠
マサト・マルヤマ 松原剛志→高木裕和
ジョニー・ゴトウ 俵 和也
ナイト二等兵 村井成仁
トム・マルヤマ 大音智海
エヴァンス二等兵 常川藍里
日系三世の女性/ナツミ・タナカ 河合篤子
カオリ・マルヤマ 彩橋みゆ
ナン・ゴトウ 小島亜莉沙
ペギー・マルヤマ 石井亜早実
ベッツィ・タナカ 髙橋莉瑚
あらすじ
2001年12月7日、80歳の退役軍人サム・キムラのもとに一人の女性が訪ねてきた。
遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイが亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇るー。
日系アメリカ人のキムラ家は、カリフォルニア州サリナスで平和に暮らしていた。
1941年12月7日に真珠湾攻撃が勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入し、日本の血をひく日系アメリカ人たちは敵性外国人扱いをされてしまう。
翌年8月にキムラ家は自宅から強制的に追い出され、収容所へと移送される。
日系の人々は厳しい収容所生活を送りながら日本人の精神にも通じる耐え忍ぶ“我慢”に想いを重ね希望を失わずに暮らしていた。
一方、ワシントンDCではマイク・マサオカが日系人の社会的地位向上のためアメリカ軍との交渉に当たっていた。
ある日、収容所でアメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配られる。
一体どう答えるべきなのか、家族それぞれの考え方の違いが露わになる。
父タツオは不当な強制収容に抵抗し、「No」を貫く。
姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキと共に強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。
弟のサミーは家族の反対を跳ね除けて、アメリカへの忠誠を示そうと軍に志願。
恋仲になった看護婦のハナ・キャンベルに家族を託し、日系人で構成された第442部隊の一員として戦場へと赴く。
己の信じる忠誠を胸に、戦時下を生き抜こうとした家族。その行く末はー
梅田芸術劇場公式サイト『アリージャンス~忠誠~』ストーリーより引用。https://www.umegei.com/schedule/934/
作品の意義とは
アメリカで上演する意義
終演後、一番考えたのはこれについてでした。
アメリカからしたら、第2次世界大戦時の日系アメリカ人の処遇は暗く隠したい歴史のはずです。
たぶん日本なら絶対に選ばない題材。(たとえば在日韓国人の日本での扱いとか)
それをあえてミュージカルにした理由は…?
ずっと考えていました。
答えは未だに分かりませんが、脚本のジェイ・クオや演出のスタフォード・アリマなどアジア系のクリエイターが多く制作に関わっていることから、被差別者の歴史、被差別者の声という側面があるのかなとは思います。
ニューヨークはリベラルな方が多いらしいので、そこで上演するのは確かに大きな意味がありそう。
ただ、正直、ニューヨークに行ったことがないし、人種差別を肌で感じる環境で生きていないので、
実際のところこのミュージカルがどんな影響を与えるのかは分からないし、考えもつきません。
ブロードウェイで実際に観た方がいらっしゃれば、どんな印象を受けたのかぜひ聞かせてください。
日本で上演する意義
アメリカで上演する意義の次に考えたのが、これでした。
これも正解は分かりませんが、
日系アメリカ人の歴史を知る
という要素が大きいのかなと思います。
日系アメリカ人という括りの方々がいることは知っていましたが、その人たちが戦争中どんな扱いを受けてきたのかは知りませんでした。
まずは、「同じ日本という国にルーツを持つ人たちの歴史を知る機会」という意味合いが大きかったなと個人的には思います。
もうひとつ、
アメリカの視点で戦争を見つめる
という要素も日本で上演する大きな意義になったと思います。
恐らく、12月7日(日本時間では12月8日)が真珠湾攻撃の日であることをパッと思い出せる人は、8月6日が何の日かを答えられる人数よりも確実に少ないでしょう。
そのくらい、今の日本に生きる人々にとって戦時中の海外に目を向ける機会は少なく、日本国内の被害・悲劇ばかりが印象に残る教育を受けています。
少なくとも私はそうでした。
なので、”Do Not Fight the storm”で真珠湾攻撃を伝えるラジオの音声が流れたとき
胸がチクリと痛みました。
真珠湾攻撃のことはもちろん知っていましたが、アメリカ側の視点で描かれているのを見ると、舞台から指を指されているような感覚になります。
今まで「日本はこんな被害を受けた」という被害者側の側面ばかりを見てきたので、急に自分たちも加害者であることを指摘されると、とてもいたたまれない気持ちになりました。
日系アメリカ人の方々を収容所に追いやった実行犯はアメリカですが、追いやるに至った原因を作ったのは日本なのだという認識は持っておかないといけないのだと、この場面を観て思いました。
音楽について
素晴らしかったHigher~もっと高く
観に行く前に何回か聞いていましたが、どの場面で歌う曲なのか分からず聞いていたので
濱めぐさん歌うまいな~~~~最高やな~~~~
っていう感想しかありませんでした。
もちろん本編観た後も最高やな~~~~~~とは思いましたが、
Higherにいくまでの台詞や状況が最高にこの曲を活かしていて
これがミュージカル~~~!!!!となりました。
ダンスパーティーのあと、フランキーとケイが二人で話している場面で、
私は何なの?と言うケイに対して
誰かのお姉さんや娘に収まっているのはもったいないよ、ケイには一人の人間として価値があるんだよ(意訳)
とフランキーに伝えられた後だからこそ、
曲中で
「少女は押したけどまだ仕事がある
弟は突然自分でこいだ」
「少女と弟なぜこんなに違うの?
彼女は今もどこにも踏み出せない」
から
「先は見えない
でもまだ間に合うわ
飛び立とう 今」
に繋がっていく筋が見えました。
曲を聴いただけでは分からなかったケイの葛藤とか、自分の人生を歩いていく決意を固めたきっかけが歌の直前のやりとりで補強されていて、そこから流れるように歌に入っていたのが本当に素敵でした。
あと、
今~~~~
のところでセットの柵?牢屋?が上下(かみしも)に捌けて空の映像が映し出されたのは、ケイの人生が開けていく感じがして、表現としては安直やけど分かりやすかったし、めぐさんの声の広がりでセットが押された感じもして、とても良かったです。
音楽面から見るアメリカから見た日本
そんな大層なことは書けませんが。
あらゆる曲の随所に日本っぽいモチーフが使われていました。
絶対音感無いので分からないですが、たぶんヨナ抜きとかニロ抜きとか都節の音階が使われてる雰囲気です。
ただ、そこはかとなく感じる中華の香り…
日本風の音階ではありましたが、拍子がきちんと取れるようになっていたのでそんな風に聞こえたのかなと思います。和風の音楽は4拍子とか3拍子、みたいな拍の概念ないですからね。
そうなの?と思った方はお正月によく流れている「春の海」を思い出してください。
1,2,3,4って綺麗に拍を数えられないと思います。これが日本の音楽です。(大体)
あと尺八風の音をフルート(多分)が奏でていて、あ~工夫されてるなあ~と思いました。
(これ本物の尺八やったらどうしよう。私の耳ゴミやん)
これもやっぱり、和の香りに寄せた西洋の風を感じました。
寿司じゃなくてSUSHIみたいな…(絶対伝わらん)
欧米の方々の日本のイメージが感じられて面白かったです。
ミス・サイゴンを観たとき、ベトナムっぽいなあ(なんとなく)と思っていましたが、
もしかしたら現地の人はこんな違和感を感じるのかも…?
【番外編】アメリカでピカドンは知られているのか
話の本筋には関係ない部分ですが、非常に心に残っている演出だったので書き残しておきます。
2幕終盤、広島に原子爆弾が落とされたことを伝える場面の終わりで、
飛行機の轟音と客席に向かって一瞬光った白い光。
あ、長崎にも落ちたのだと一瞬で分かる演出でした。
この演出はブロードウェイでもやっていたのだろうか、
そもそも向こうの人たちは、原子爆弾が落ちるとピカッと光ることを知っているのだろうか、
「ピカドン」は常識なのだろうか、
雰囲気的に爆弾が落ちたことは分かると思いますが、「ピカドン」を知っているか知らないかであの演出の受け取り方はかなり変わると思います。
知っているからこそ、あの光に恐怖を感じました。
当時の追体験、とまでは言いませんが、戦後うん十年経ってから生まれた人間が当時の状況を実感するには十分すぎる演出だったと思います。
知らなければ、ピカッとしたことに驚きはすれど実感を得ることはないでしょう。
ブロードウェイで観劇した人の内、一体どのくらいの人たちに光の意図が伝わっているのか、
伝わっていたとして、あの光を浴びてどんな感情を持つのか
とても気になりました。
おわりに
話の本筋は、「家族」とか「愛」とか「何に忠誠を誓うのか」とか…
そのあたりなのは十分分かってはいるのですが、それよりも何よりも
何でこれをアメリカと日本で演ろうと思った???(良い意味)という疑問で頭が支配された結果、このような形になりました。
同じ日系アメリカ人でも、星条旗に忠誠を捧げたり、徴兵制度に反発したり、天皇の否定は祖国の否定!みたいな感じで自分の信念を曲げなかったり、見た目は同じでも国に対しての価値観は様々な部分が新鮮でもあり、島国日本に住んでいたら一生心から理解することは出来ないんやろなあ…という、改めて日本は良い意味でも悪い意味でものほほんとした平和な国であることが分かった気がします。
このミュージカルを観た直後にゴールデンウィークに上演予定だった諸々の公演の中止が発表されたので、
気持ち的には「政府…これ観てもエンタメは不要不急って言えるんか…(怒)」って感じでした。
これは日本人全員観た方がいい。今までの「日本は被害者」的立場ではない戦争ものは、日本人にとってかなり新鮮に映るはずです。その後の受け取り方は様々かもしれませんが。
野球の場面やダンスパーティーの場面はショーアップされていてエンタメの魅力もあり、
登場人物達それぞれの思想や感情の揺らぎも作り込まれていて、演劇としての魅力もあり、
かなりお腹いっぱいな作品でした。1回じゃ足りない。
5/22(土)18:00からはWOWWOWで放送されるみたいですね!
私は諸般の事情で加入が難しいので観れませんが、WOWWOW視聴できる方はぜひ!
戦争とか差別とかいっぱい書きましたが、本筋は「愛」です。ハートフルウォーミング。
誰かが打たれて蜂の巣になったり等、戦争の面で直接的にしんどいシーンは無いのでそのあたり苦手な方も大丈夫かと。
キャストのみなさんは歌うまで最高でした。海宝さん×濱田めぐみさんで組んだら向かうところ敵無しですね…。
アリージャンスも「3年で2回上演」みたいな契約なのかしら?さすがに違うかなあ。
でも再演があったら次は絶対通いたい。
曲も物語もキャストさんも、素晴らしい作品でした。
それでは
おあとがよろしいようで。
コメントはこちら