能 狂言『鬼滅の刃』を楽しもう!①能・狂言って?

その他

こんにちは。

観劇三昧OLです。

昨年12月19日にジャンプフェスタで発表された

能 狂言『鬼滅の刃』

今回の記事では、能狂言『鬼滅の刃』を100倍楽しむために

能って?狂言って?

鬼滅を能にするってどんな感じ??

といった疑問を解決・考察していこうと思います。

初回は、

能・狂言とは?

という素朴な疑問に関して、

  • 能・狂言のつくり
  • 登場人物
  • 舞台のつくり
  • 物語

の4つに焦点をあてて解説していこうと思います!

それでは、

レッツゴー!

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能・狂言のつくり

能・狂言は「歌舞劇(かぶげき)」と呼ばれる演目の一種で、

漢字のとおり、歌と舞を組み合わせて表現される劇のことです。

能の特徴

能は大抵の演目で、主人公が亡くなっているか、この世のものではない存在になっています。

また、主人公は「面(おもて)」と呼ばれるお面をかけて*登場します。

*能狂言では、面を装着することを「面をかける」と言います。

面はこの世のものではない存在、もしくは女性を演じる時に使われます

男性を演じる時は「直面(ひためん)」と言い、素顔で登場します。

演目の内容は、人間の内側に深く切り込み、苦しみや悲しみを描いた作品が多いです。

狂言の特徴

狂言は能と正反対です。

主人公は生きており、面はかけず素顔で登場します。

面をかけるのは動物や精霊役の時に限られます。

演目の内容も明るいものが多く、笑いや風刺を中心とした陽気なものとなっています。

五番立てについて

マンガの中にもバトルもの、スポーツ系、ラブコメとジャンル分けがあるように、

能にも5つのジャンルがあります。

脇能物(わきのうもの)

 神が主人公

修羅物(しゅらもの)

 男が主人公

鬘物(かずらもの)

 女が主人公

狂物(くるいもの)

 狂った人や他のジャンルに属さない人物などが主人公

切能物(きりのうもの)

 鬼など人間以外のものが主人公

この5種類を神→男→女→狂→鬼の順に上演することを「五番立て」と呼びます。

上演時間が長時間に及ぶため、現在はこの形で上演されることはほとんどありません。

しかし、能 狂言『鬼滅の刃』は五番立てで上演されることが決定しています。

五番立てといっても昔のように1日がかりで行うわけではなく、

ストーリーの一部(単行本6巻まで)を約2時間程度にまとめて上演します。

現時点の構想*では、

修羅物・・・炭治郎が鬼狩りをする話

鬘物・・・禰豆子が主人公の話

切能物・・・那田蜘蛛山編

となっています。

初めての方も気軽に伝統的な五番立てを体感出来るいい機会になるのではないでしょうか。

*ローチケ演劇宣言!「能 狂言『鬼滅の刃』」製作発表会見レポートより(2022年5月29日最終閲覧)
https://engekisengen.com/genre/tranditional/36416/

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上演の流れ

1つの作品を上演する際、多くの場合

前場→間狂言→後場(のちば)

という構成になります。

前場は1幕、後場は2幕というイメージですね。

前場が終わり主人公がいったん退場することを「中入り(なかいり)」と呼びます。

2幕もののミュージカルやストレートプレイだとここで休憩に入りますが、

能では「間狂言(あいきょうげん)」と呼ばれる狂言が始まります。

前場の振り返りや主人公の人物像を詳しく語ることが多く、

前場を観るだけでは話が分からなかった部分を解決することもできます。

一方で、中入りや間狂言が無い演目もあります。

鬼滅の刃はどうなるのか分かりませんが、五番立てで約2時間に収めるとすれば

5つすべての作品で間狂言無し、もしくは、鬘物や切能物だけなど作品を絞って間狂言をおこなう可能性が考えられます。

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登場人物

能に登場する人々の名称

能狂言の登場人物には、役割に合わせて名前がつけられています。

シテ

主役。

前場と後場で姿が変わるときはそれぞれ前シテ、後シテと言います。

ツレ

シテの連れ。助演。

従者など。

ワキ

シテの相手役。「脇役」ではない。

(イメージとしては宝塚のトップ娘役さんや2番手さんが近い気がします。)

生きている男性のため面はかけません。

ワキツレ

ワキの連れ。助演。

アイ

能の中で狂言方が務める役。

子方(こかた)

子役。面はかけない。

狂言に登場する人々の名称

シテ

主役。

アド

主役以外。相手役や助演。

他、狂言にも子方がいます。

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役割分担

能狂言には大きく4つの役割分担があります。

シテ方

シテ

・シテツレ

・後見

 シテの小道具を出したり着替えを手伝う。

・地謡(じうたい)

 「謡(うたい)」と呼ばれる、シテの心情描写や風景描写などナレーションのような役割を果たす歌をうたう人々。通常8名で、全員同じ節を謡う。

シテ方には5つの流儀があり、それぞれで演奏法や台詞などが異なります。

鬼滅の刃は能楽観世流で人間国宝の大槻文蔵さんが監修を務めるため、観世流(かんぜりゅう)の作品に分類されることになるでしょう。

◆ワキ方

ワキ

・ワキツレ

◆狂言方

アイ

◆囃子方

・笛方

 正式には「能管」と呼ばれる笛を吹く。

・小鼓(こつづみ)方

 肩にかつぐ形で持つ。

 チ・タ・プ・ポ という4つの音を出す。

・大鼓(おおつづみ)方

 脇に抱える形で持つ。

 囃子方のリーダー的存在。

・太鼓(たいこ)方

 抱えず台の上にのせて演奏する馴染みの形。

 人間以外の存在が出てくるときの登場曲で使われる。

実際は他の楽器同様男性が務めることがほとんどです。

舞台のつくり

能楽の舞台は普通の演劇とは少し違うつくりになっています。

下の図は能楽の舞台を上から見たときの様子です。

舞台

能の舞台はすべてヒノキ作りです。

また、野外で公演が行われていた名残として屋根が付いており、一軒家のようにも見えます。

目付柱

舞台手前、左側の柱を「目付柱(めつけばしら)」といい、

面をかけていて視界が悪い能楽師の目印となっています。

鏡板

舞台の奥、松が描かれた壁を「鏡板」といいます。

鏡板に描かれた老松は神様が降臨する木という説もあります。

橋掛リ

舞台下手側から奥に伸びている通路は「橋掛かリ(はしがかり)」といい、

登場人物達の登場、退場に使われます。

松の木

橋掛かリに沿うように生えている松は、それぞれ舞台側から

一ノ松」「二ノ松」「三ノ松」と呼ばれており、

遠近感を出すために一ノ松は高く、三ノ松は低くつくられています。

◆白州

舞台下に見える白い部分を「白州」といい、白い石が敷き詰められています。

昔、野外で能を上演していた時代は、この白い石が天然の照明の役割を果たしていました。

座席

正面

その名の通り舞台の正面の席です。

柱が邪魔になることもなく、真正面から鑑賞できます。

◆中正面

舞台を斜めから鑑賞する席です。

目付柱で視界が遮られるため、リーズナブルな価格で販売されることもあります。

※鬼滅の刃では全席同じ価格で販売されています。

脇正面

舞台を真横から鑑賞する席です。

橋掛かリ沿いの座席では能楽師さん・狂言師さんを間近で見ることができます。

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物語

能は、人間の心の内側に切り込み、苦しみや悲しみを描く作品が多いです。

その苦しみや悲しみは、時に人間としての形すら保てなくなるような大きさまで肥大し、

鬼や亡霊、時には蜘蛛や大蛇へと変化します。

人間とはかけ離れた姿になってしまった者は、その怨念や悲哀を謡や舞にのせて訴え、救いを求め、

最終的にはワキ(僧侶の役が多い)の導きを経て、成仏・討伐・消え去るといった結末を迎えます。

ワキはシテのカウンセラーのような役割を果たすことが多いです。

…この話、聞き覚えがないでしょうか?

鬼滅の刃も、それぞれ様々な事情を抱えながら鬼になった者たちを炭治郎が討ちます。

ただ鬼を討つだけでなく、その鬼のバックボーンや、討った鬼の心に寄り添う炭治郎が描かれることで、

単純な勧善懲悪ストーリーとはひと味違う深みが生まれています。

こういった点は能と親和性が高く、

演出の野村萬斎さんはインタビューで

(前略)鬼にも悲しみがあるというところ、鬼が単なる化け物ではなくてその悲しみも含めて描かれているストーリー自体に能 狂言、特に能にするという意味では強く、親和性を感じました。

ローチケ演劇宣言!野村萬斎 独占インタビュー|「能 狂言 『鬼滅の刃』」より引用。https://engekisengen.com/genre/tranditional/37235/

と語っています。

まとめ

◆能と狂言の主な違い

狂言
主人公亡くなっている生きている
かけるかけない
内容悲しさ・苦しさ・せつなさ笑い・風刺

◆能狂言『鬼滅の刃』を見る前に覚えておきたい3点

  • シテは主人公、ワキは相手役
  • シテはこの世のものではない存在であることが多く、面をかけている
  • 能狂言『鬼滅の刃』は五番立てと呼ばれる、5つのストーリーをオムニバス形式で上演する形をとる。

能のセオリーどおりでいくと、能狂言『鬼滅の刃』は、炭治郎ではなく鬼を中心とした展開になりそうですね。

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おわりに

今回は、「能って?狂言って?」という基本的な部分を解説してみましたがいかがでしたか?

難しそう、敷居が高そうというイメージもあるかと思いますが、

鬼滅の刃を知っている方なら、話の筋が分かっている分、能独特の表現方法や演出にフォーカスを当てて観ることができるので、

初めてでも楽しんで観れるのでは…?と思っています。

残念ながら東京公演は完売とのことですが、冬の大阪は今から!

伝統芸能に触れられるまたとないチャンス、私もぜひ行きたいです。

それでは、おあとがよろしいようで。

参考資料

◆文献

小田幸子『マンガでわかる能・狂言』
誠文堂新光社、2020年

◆サイト

ローチケ演劇宣言!野村萬斎 独占インタビュー「能 狂言『鬼滅の刃』」https://engekisengen.com/genre/tranditional/36416/(2022年6月10日最終閲覧)

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